おしえて!矯正歯科の上野先生!

受け口(反対咬合)の矯正

おしえて!矯正歯科の上野先生!
  • 受け口(反対咬合)とはどんな症状ですか?

    本来、上下の歯の関係は、上の歯が下の歯にかぶさった状態が正常です。受け口(反対咬合)はそれが逆になった状態、つまり下の歯が上の歯の外側にある状態を言います。

    これは、前歯だけでなく奥歯にも起こる可能性があります。
    原因としては、

    1. 骨格的要因(上顎が小さい、下顎が大きい、またその両方)
    2. 歯の要因(上の前歯が過度に内向きに生えている、下の歯が過度に外向きに生えている
    3. 家族に受け口の人がいる等の遺伝的な要因

    等が挙げられます。

    受け口(反対咬合)の顔貌の特徴として、俗にいう「しゃくれ」(正しくは「下顎前突」)となる事があります。

    受け口(反対咬合)であることの身体的影響は、前歯で物が噛みづらい、発音への影響、顎関節症のリスク、顔貌の審美的影響等が挙げられます。特にお子様の場合、発音のしづらさが言葉の習得に影響する場合があります

    受け口(反対咬合)
    「受け口(反対咬合)」
    下の歯が上の歯にかぶさった状態
    受け口(反対咬合)
    骨格的要因の反対咬合
    受け口(反対咬合)
    歯の生え方が原因の反対咬合
  • 受け口(反対咬合)は歯科矯正で治せますか?矯正期間は?何歳までできますか?

    受け口(反対咬合)は、矯正治療で治す事が可能です。

    歯が原因の反対咬合は、ワイヤー矯正、またはマウスピース等で歯の位置を改善することで治療が可能です。一般的な矯正治療と同じく年齢の制限は特にありません。

    骨格的な要因による反対咬合の場合は、治療開始年齢によって方法が違います。

    ① 成長期のお子さんの場合

    上顎前方牽引装置、チンキャップ、機能的矯正装置等により顎の成長をコントロールすることで改善を図ります。下顎の成長は身長の伸びと同期しており、身長が伸びている間は下顎の成長に注意していかなければなりません。特に男の子の場合、高校生くらいまで身長が伸びていく子もいますから、そこまでは顎の成長もコントロールしなければならず、経過観察も含めると7~8年と長期に及ぶ場合があります。

    ② 大人になってから骨格的な要因による反対咬合を治療する場合

    骨格的な不調和を改善するには、外科手術を伴う矯正治療を行う必要があります。詳細は「外科矯正(外科的矯正)」のページを参照ください。

  • 顎のしゃくれが気になっていますが、矯正で治せますか?

    「しゃくれ」とは俗語で、横顔を見た時に下顎が突き出て見える状態を言い、専門用語では「下顎前突」と言います。

    成長期のお子さんが反対咬合でしゃくれている場合、顎の成長をコントロールすることで改善を図ります。

    成長が終わった大人では、歯並びの矯正だけでは改善が難しい場合、外科手術を伴う外科(的)矯正が必要となり、手術で下顎を後方へ下げる事で気になるしゃくれを改善することができます。

    また下のイラストのように、反対咬合になっていなくても、元々顎先の骨の形が飛び出ていることで顎がしゃくれているケースもあります。

    受け口(反対咬合)
  • 大人になっても受け口は矯正できますか?費用はいくらですか?保険はききますか?

    できます。

    受け口(反対咬合)の場合も、矯正治療単独であれば、費用は一般的な矯正治療と同じで自費診療となります。(料金ページを参照ください)

    中・高校生以降(思春期成長終了以降)、矯正治療単独では改善が難しいと診断された場合、外科手術を伴う矯正治療を受けることになります。これを「外科(的)矯正」といい、手術も手術前後に行うワイヤー矯正治療も全て保険が適用されます。

    外科(的)矯正では、矯正歯科医が口腔外科医や形成外科医と協力・連携しながら治療計画を立て、治療を進めます。詳しくは外科矯正(外科的矯正)のページを参照ください。

  • マウスピース矯正で受け口は治療できますか?

    骨格的な要因がなく、あっても軽度の反対咬合であれば治療可能です。

    しかし、下顎が前に出ていることが気になっているのであればマウスピースでは顎の前後関係の改善には至りません。

    いずれの場合も矯正専門医に相談の上、正確な診断で適切な治療方法を提示してもらうことが大切です。

  • 受け口の矯正をすると、顔が変わるって本当ですか?

    受け口の程度にもよりますが、矯正治療により口元が変化することはあります。特に、外科矯正の場合は、歯を動かすだけでは解決できない顎の骨格の問題を根本的に解決することができますので、健康上のメリットも大きく、また顔の歪みや輪郭、横顔なども大きく変化することで、長年のコンプレックスから解放される方も多いように思います。

  • 子供の受け口の矯正について教えてください。ヘッドギアという器具を使うのでしょうか?保険適用されますか?

    幼児期、成長期にあるお子さんの受け口の矯正は、1期治療で顎の成長をコントロールすることで改善をしていきます。

    上顎は、比較的成長のピークが早く、中学生になる頃に終わることが多いのに対して、下顎は身長の伸びと同期しているため、思春期成長のピークが過ぎるまでは成長のコントロールが必要です。特に男の子の場合は、高校生になっても身長が伸びるケースも見られ、1期治療の期間が長くなることが多いです。またその間に並行して部分的にワイヤーで歯並びの改善を行うこともあります。

    使う装置としては、上顎前方牽引装置、チンキャップ、機能的矯正装置等が一般的です。1期治療は保険適用外となります。

    子どもの1期治療は、治療に対する協力度(装置の使用状況)が重要で、協力度が低いと十分な改善が見られなかったり、外科矯正へ移行せざる得ない状態になる場合があります。

    「ヘッドギア」という器具は、受け口とは逆の出っ歯の治療に使います。

  • 受け口の矯正のゴムかけとは?

    反対咬合の治療の際に、上の奥歯から下の前歯に向かって小さな輪ゴム(エラスティック)をかけることがあります。ゴムの力で下の前歯を後ろに引っ込めることで受け口を改善します。

    受け口(反対咬合)
  • しゃくれを矯正すると、小顔になりますか?

    矯正治療単独では、顔の変化は起きにくいです。

    外科手術を併用した場合の矯正治療では、顎の位置自体を変えるため下顎の前突感が改善され、横顔や正面の印象が変わります。それにより、小顔に見えることがあるかもしれません。

  • 受け口を自力で矯正することは可能でしょうか?

    民間療法的な行為で、スプーン、竹べら等を噛んで受け口を改善する方法も聞きますが、前歯の一部だけが引っ込んだようになることはあっても、歯がきれいに並ぶことはありません。

    またお子さんの場合、たとえ一時的に改善できたとしても、その原因が骨格的な問題にある場合、成長とともに再発する可能性が高いのでお勧めできません。矯正専門の歯科医院を受診しましょう。

  • 受け口の矯正に抜歯は必要ですか?

    不正咬合の種類に関係なく、診断結果によっては抜歯が必要になるケースはあります。

  • 受け口の矯正期間はどのくらいでしょうか?

    大人の場合、矯正単独、外科矯正どちらの場合も、動的治療期間2〜3年、保定治療3年が平均的です。

    成長期の子どもの場合、前歯の受け口自体は1年程度で改善可能ですが、全体的な治療が必要なケースがほとんどで、スタート時期に関わらず1期治療として第二大臼歯が生える頃(小学校卒業くらい)までかかります。

    また、骨格的に原因がある場合は、一旦改善が見られても油断すると成長とともに受け口が再発することもありますので、成長のピークが過ぎるまでは慎重に経過を診ていきます。特に男の子では、高校生まで1期治療が及ぶ場合があります。

  • 八重歯で受け口です。矯正できますか?

    叢生、出っ歯、受け口など不正咬合の種類に関係なく八重歯の状態になることがあります。正確な検査、診断のもと「八重歯で受け口」の治療は可能です。

    症例02受け口(下顎前突)」を参照ください。

  • 受け口の矯正は手術なしでもできますか?

    上下の顎の位置の不調和が少なく、歯並びだけで改善できるケースであれば可能です。不調和が大きいケースでは、外科手術を併用した治療の方が良好な結果が得られます。

  • 矯正で受け口になることはありますか?

    矯正専門医院において、正確な検査、診断に基づいて治療をした場合、治療結果として受け口になるという事はありません。当院ではそのような事例はありません。

  • 裏側矯正で受け口は治療できますか?

    できます。

    表側に比べて裏側矯正では治療が難しい、時間がかかる等といわれることがありますが、そのようなことはありません。ただ、表側からの治療とは違ったスキルが必要なため、裏側の治療経験が豊富な先生に診ていただくことをお勧めします。

  • 部分矯正で受け口は治せますか?

    受け口になっている原因が前歯にだけに限られているのであれば、部分的な治療も可能です。しかし多くの場合、様々な要因が影響して受け口になっているので、その要因を改善しなければ、受け口は治りません。

    奥歯の位置からずれていて受け口になっているのであれば、全体的な治療が不可欠になります。

著者プロフィール

上野拓郎 博士(歯学)

E-line矯正歯科 院長
日本歯科専門医機構認定 矯正歯科専門医・研修指導医
日本矯正歯科学会 認定医・指導医・臨床医(旧臨床指導医)
世界舌側矯正歯科学会(WSLO) 認定医

北海道大学歯学部卒業後、歯科矯正学を専門に研鑽を積み、1997年にE-line矯正歯科を開院。矯正歯科分野において30年以上の臨床経験を重ね、日本矯正歯科学会認定医・指導医・臨床医(旧臨床指導医)、舌側矯正の国際的認定医など多数の資格を取得。2023年には日本歯科専門医機構より「矯正歯科専門医」、2025年には「研修指導医」に認定される。