マウスピース矯正とは
マウスピース矯正は「マウスピース型矯正装置による治療」が正式な名称で「アライナー矯正」と呼ばれることもあります。取り外し可能な透明な矯正装置を使用した治療方法で、定期的にマウスピースを交換し、少しずつ歯を移動させます。透明な素材が使用されているため、比較的目立たず治療を行えます。
当院でも20年ほど前、日本に導入された頃より認定ドクターとしてこの装置に注目していましたが、当時の装置としての性能は、ワイヤー矯正に及ぶものではありませんでした。しかし、素材の改良、ノウハウの蓄積により、現在では矯正装置として十分な性能を持つものとなりました。

矯正専門医によるマウスピース矯正を
マウスピース型矯正装置による治療を安全に行うには、マウスピースの特性を熟知していることに加え、正確に診断する能力や、その診断結果から歯の3次元的な移動方向や移動量を決定していくという矯正分野の専門知識が不可欠です。
この専門知識は、マウスピースに限らず、表側、裏側のワイヤー矯正を行う際にも共通の、かつ必須の専門知識です。
加えて、大前提となる「マウスピース矯正の適応症例かどうか」という判断も矯正専門医の知識が必要とされます。
マウスピース矯正のメリット・デメリット
メリット
- 矯正装置が目立たない。
マウスピースは透明で目立ちにくいことが大きな特徴です。また歯の表面につけるアタッチメント(歯を確実に移動させるために付けるもの)も歯の色に近いものを選びますので目立ちません。 - 装置の着脱が簡単で食事や歯磨きがしやすい。
お口の中の管理がしやすいことで虫歯や歯周病のリスクが低くなります。 - 金属アレルギーのある方も使用できる。
- 通院回数が少なくて済む
治療の進み具合により変わりますが、1〜3ヶ月に1回程度の通院となります。 - 診療室での治療時間が比較的短い。
歯の移動状態、マウスピースの適合状態をチェックします。
デメリット
- 歯の移動量の少ない症例に限られる。
(軽度の乱杭歯、軽度の歯の空隙、矯正治療後の軽度の後戻り等) - 1日に20時間と長時間の装着を必要とし、使用状況によって治療期間や治療結果に影響が出る。
- 骨格性要因を含む症例や顎変形症には適さない。
- 現在の医療水準で考えれば、精密な歯の移動は原則として困難で満足のいく治療結果が得られない可能性がある。
日本人は欧米人より頭が短い⁉︎
マウスピース型矯正装置による治療が生まれたのはアメリカです。元々欧米人(白人)の骨格を前提にして作られた治療法です。
欧米人とアジア人の骨格の特徴には違いがあり「長頭型」と言われる欧米人に比べ、日本人を含むアジア系の人種は「短頭型」と言われ頭蓋骨が前後に短く、それに伴い歯列も短いのが特徴です。
人種に関わらずヒトの歯は全部で32本ですが、進化に伴い顎の骨は小さくなってきましたから、最後に生えてくる第3大臼歯(親知らず)は生えてこないケースがほとんどで、現代人の正常な咬み合わせの歯はトータル28本です。

長頭型の欧米人であればこれで十分並ぶことが多くても、短頭型で歯列も短い日本人の場合は、それでもスペースが足りなくて並び切らずに凸凹の強い叢生となり、さらに歯を抜いて並べなければ理想的な咬み合わせが作れないというケースが多いのです。
アジア圏の矯正治療の方が欧米の治療より難易度が高い、と言われるのはこうした事情によるものです。
このことが、マウスピース型矯正装置での治療が比較的軽度の症例には向いていて、日本人によく見られる重度の症例には適さない場合が多いと言われる所以です。
マウスピース矯正×ワイヤー矯正のメリット
マウスピース矯正単独では治療が難しい症例でも、治療の中でワイヤー矯正を併用することで良好な治療結果が得られる場合があります。
正式名称ではありませんが「ハイブリッド矯正」「コンビネーション矯正」などと呼ばれることもあるこの方法は、歯の凸凹やねじれが大きいケース、抜歯スペースにより歯の移動量が大きいケース等に特に有効です。ワイヤー矯正を併用することで、マウスピース単独で治療した場合に比べ、より良好な治療結果が得られ、期間の短縮も期待できます。(ワイヤー矯正は、表側でも裏側でも可能です。)
二つの治療法の良いところを組み合わせることで、患者さまにとっての選択肢も広がりメリットの大きい治療法と言えるでしょう。
初診相談の際、マウスピース単独で可能なケースなのか、不向きなケースなのか、ワイヤー矯正と併用するのが適切なケースなのか、多角的なアドバイスを得る事が大切です。
また、計画を柔軟に調整できることも必要とされますので、マウスピース矯正とワイヤー矯正の両方の技術に精通した矯正専門医に相談されるとよいでしょう。
Flow
マウスピース矯正の流れ
Flow
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Step 01
矯正相談
気になる症状をご相談ください。
歯並び、咬み合わせの状態を確認し、予想される治療についてご説明します。 -
Step 02
検査
・歯科用X線撮影 [セファロ(頭部X線規格写真)、パノラマレントゲン、歯科用C T]
・顔貌の撮影
・口腔内写真
・歯型採得
・口腔内3Dスキャン
等、必要な精密検査を行います。 -
Step 03
診断・治療計画
検査、診断結果をもとに、コンピューターソフト上でマウスピースの設計、製作を行います。
一度の移動量は約0.25ミリ。それぞれの歯について、3次元的な移動方向と移動量を決定し、マウスピースの設計に組み込みます。これには、矯正歯科医の豊富な専門知識と診断力が必要です。 -
Step 04
マウスピースのお渡し・治療開始
マウスピースをお渡しの際は使用方法・管理の仕方を詳しく説明します。
装着時間:
食事、歯磨き以外は装着します。1日の装着時間は20時間を目安にしてください。マウスピースの交換:
7〜10日ごとに新しいマウスピースに交換していきます。アタッチメント:
治療計画に基づき歯にアタッチメントを付ける場合があります。
アタッチメントとは、歯の移動を確実にするための突起物で、歯の色に近いため目立ちません。通院:
装置の使用状況や治療段階によって変わりますが、1〜3か月の間隔で通院していただきます。歯の移動状態、マウスピースの適合状態をチェックします。
※使用状況によりマウスピースの適合が悪くなった場合、作り直しが必要になることがあります。 -
Step 05
保定
ワイヤー矯正と同様にリテーナーによる保定治療を3年間行います。来院間隔は、3〜4か月に一度です。
当院で使用するマウスピース型カスタムメイド矯正装置
・Lux Aligner
・Aso Aligner
・SureSmile(薬機法未承認)
Lux Aligner〜その有用性について
現在、様々なメーカーのマウスピース型矯正装置が使用されていますが、当院が採用するLux Alignerは、これまでの熱成形型マウスピースとは違い、3Dプリンターで製作される革新的なマウスピースです。熱成形型の場合、薄いプラスティック製のシートを熱して柔らかくして、模型に圧接してつくります。そのため厚さが均一にならないことがあり、マウスピースの適合にムラができるという問題がありました。
それに対して、Lux Alignerは、3Dプリンターで製作するため、厚さが均一で歯にしっかりと密着したマウスピースとなっています。
その他のメリット
- 歯にしっかりと密着するため、アタッチメントが不要か、数を少なくできる。
- 形状記憶材料でできているので、煮沸等で変形したとしても元にもどる。(熱成形型は、熱が加わると変形して使えなくなります。)
- 煮沸(100℃)できるので、衛生的である。
- 薬機法で承認された材料により国内で生産された矯正装置(正式な技工物)である。


